大牟田病院での障害者虐待疑惑 – 書類送検と起訴の行方
ニュースの要約
福岡県大牟田市の国立病院で、障害を持つ入院患者への虐待が繰り返されていたとして、看護師ら3人が書類送検されました。彼らは容疑を否認しています。県の調査によれば、過去に患者に対するわいせつ行為や暴行といった虐待が行われていたと認定されています。警察は詳細を捜査し、容疑者たちはその一部行為について否認しています。病院はこの問題に対し、原因究明と再発防止策を講じるために第三者委員会を設置しています。病院は信頼回復に努めるとコメントしています1。
書類送検とは?
警察は、犯罪の捜査をしたときには、原則として、書類と証拠物とともに事件を検察官に送致しなければなりません2。これを「検察官送致」と呼びます。検察官送致には、被疑者(犯罪をしたと疑われている人のことで、容疑者とも呼ぶことがあります)が逮捕されて警察の留置場などで身柄拘束されていない場合と、身柄拘束されている場合があります。前者、つまり身柄拘束がされていない場合を「書類送検」と報道では表現されます。
この報道されたケースの元介護職員や看護師は逮捕されていないことが、「書類送検」という表現からわかります。
次の展開:起訴されるか?
事件が送致された検察官は、この事件の被疑者について、起訴するか否かを判断します。起訴とは、検察官が裁判所に対して刑事処罰を求めることを指します。この事件の進展の中で、次の重要な段階は、検察官による起訴の判断です。
今回書類送検された3人の被疑者のうち、わいせつ行為を行ったと疑われている元介護職員は「絶対にしていない」「故意に触っていない」と容疑を否認しています。また、暴行を行ったと疑われている看護師は4件中3件を否認しています。
被疑者が否認しているため、検察官や警察は自白を引き出して容疑を認めさせるか、それが難しい場合でも被害者が否認している状況において有罪を証明できる十分な証言や証拠を集める必要があります。今回の被疑者は逮捕されていないため、否認を自白に転じさせることは、捜査機関にとって容易ではありません。
今回の事件には、検察官が起訴を行うにあたり、いくつかの難点があります。まず、わいせつ行為については5年前や3年前のものが含まれているという点です。3年以上も前の事件となると、被害者の記憶が曖昧になる可能性があります。
さらに、以前の報道によれば「虐待行為の多くは夜間、患者と職員が2人きりの時に行われた」とされています3。つまり、目撃者が不在であり、第三者による目撃証言がない場合、被害者の証言の重要性が増します。しかし、被疑者が容疑を否認しているため、検察官としては被害者の証言が裁判所に信じてもらえない場合、無罪となるリスクを考慮する必要があります。検察官は、有罪判決が下されると確信できない限り、起訴に慎重になります。
疑わしきは被告人の利益に
この報道を見た人の中には、難病者や重度の障害者に対して酷い行為をする者がいるのだと感じた人も少なくないでしょう。しかし、3人の被疑者は容疑を否認しています。この人たちが本当に犯罪をしていないのか、あるいは言い逃れをしているだけなのか、私たちには判断がつきません。
こういった刑事事件において重要なのは、有罪判決が確定するまで被疑者や被告人を犯人扱いしないことです。これを「疑わしきは被告人の利益に」や「無罪推定」の原則と呼びます。
この記事は、この原則に基づいて書かれています。
- 1 NHK NEWS WEB「国立大牟田病院虐待問題 看護師ら3人書類送検 3人容疑否認|NHK 福岡県のニュース」 ↩︎
- 2 刑事訴訟法246条 ↩︎
- 3 読売新聞オンライン「福岡県・国立大牟田病院2職員による性的虐待認定…意思疎通困難や体動かせない患者6人が被害」 ↩︎