遺言執行者を活用しよう!知的障害のある子の相続で知っておきたいこと
はじめに
知的障害のある子が親の財産を相続する場合、不動産の名義変更や預貯金の解約などの手続きは、原則として子が自分で行う必要があります。手続きを他の相続人に代理で行ってもらうことも可能ですが、委任状への署名・押印や、実印の登録など、いくつものハードルがあります。
このようなハードルは、遺言に遺言執行者を指定することで回避し、スムーズに相続手続きを進めることができます。もっとも、本人に成年後見人が選任されている場合は、成年後見人が相続手続きを行うことができるため、遺言執行者は不要です。
本記事では、遺言執行者の役割や選任方法、報酬などについて詳しく解説いたします。障害者の親亡き後に備えるためにも、ぜひご一読ください。
遺言執行者とは?
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現するために、遺産(相続財産)の管理など必要な手続きを行う人のことです1。
遺言によって遺産を相続する人に障害があって自分で手続きを行うことが困難な場合に、遺言執行者がいれば、スムーズに相続手続きができます。
遺言執行者の指定・選任
遺言執行者は、次のような方法で選ばれます。
- 遺言書で指定する:遺言書を作成する際に、遺言執行者を誰にするかを指定します2。これが最も一般的で確実な方法です。
- 家庭裁判所に選任してもらう3:遺言書で指定しなかった場合や、指定した遺言執行者が辞退・死亡した場合などは、家庭裁判所に選任を請求できます。
原則として、遺言書で指定することが望ましいです。さまざまな事情で指定できなかった場合でも、遺言を残した人が亡くなった後(相続開始後)に家庭裁判所を通して選任することが可能です。
遺言執行者には誰がなれる?
遺言執行者になれるのは、以下の「なれない人」に該当しない限り、基本的に誰でもなることができます。
遺言執行者になれない人
- 未成年者
- 破産者4
遺言執行者になれる人
上記以外であれば、例えば、
- 他の相続人
- 相続人にはなれない親族
- 全くの他人
- 法人 でも、遺言執行者になることができます。
ポイントは、遺言者の意思を尊重し、誠実に職務を遂行してくれる信頼がおけるかどうかが重要となります。
遺言執行者ができること・できないこと
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な範囲で、さまざまな行為ができます。
例えば、重めの障害のある子に預貯金を残した場合、遺言執行者が預貯金を解約して、払い戻したお金をその子の銀行口座に振り込むことができます。
また、不動産を子に残した場合、遺言執行者が一人で、不動産の名義変更の手続きができます。
もっとも、遺産ではないものについては、遺言執行者には権限は及びません。例えば、一般的に生命保険の死亡保険金は遺産ではなく、受取人の財産なので、遺言執行者が死亡保険金の請求手続きはできません。
遺言執行者の権限は、遺言書の内容と法律によって定められており、その範囲内で職務を遂行することが求められます。
遺言執行者の報酬
遺言執行者には報酬を支払うことができます。原則として、遺言執行者を指定する際に、報酬についても指定するのが通常です。報酬を支払わないことも、遺言者が自由に決めることができます。ただし、遺言執行者は遺言執行者の就任を拒否することができる5ので、報酬が少ないと拒否されることもあります。そのため、遺言執行者を指定する際には、予定者と報酬についても話し合っておく方が無難です。
遺言執行者の報酬は、遺言者と予定者との話し合いで決めておくのが原則です。決めていなくても、家庭裁判所に遺言執行者の報酬を決めてもらうことができます6。
まとめ
遺言執行者を指定することで、知的障害のある子が相続する際の負担を軽減し、スムーズな手続きを実現することが可能です。
遺言執行者は、遺言者の意思を尊重し、財産管理や手続きを適切に行う重要な役割を担います。遺言執行者の選任や報酬については、専門家と相談しながら、ご自身の状況に合わせて適切な判断を行うことが大切です。
将来への不安を解消し、大切な家族を守るためにも、遺言執行者制度の活用をぜひ検討してみてください。
遺言作成サービスのご案内
「遺言を残したいけれど、何から始めればいいか分からない…」
そんな方は、ぜひ一度、当事務所の遺言作成サービスをご検討ください。
私自身、重度知的障害のある子どもの父親であり、障害のある子を育てる親としての視点も踏まえながら、あなたの想いを形にするお手伝いをいたします。