その成年後見人は、お子さんが亡くなるまで支えられますか

信頼できる成年後見人が見つかっても残る不安

親亡き後のわが子のために、成年後見制度の利用を検討している親御さんは多いと思います。

しかし、家庭裁判所に申立てをしても、見知らぬ弁護士や司法書士が成年後見人に選ばれるかもしれません。わが子のことをまったく知らない人が、わが子の生活を左右する判断をすることに、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

実は、信頼できる人に成年後見人になってもらうこともできます。そうすれば、その不安は解消されます。

しかし、たとえ信頼できる成年後見人が見つかったとしても、それだけで安心とはいえません。特に知的障害のあるお子さんの場合、成年後見人による支援が数十年にわたり、その途中で成年後見人の交代が必要になる可能性があるからです。

成年後見人が個人であり、ご本人より年齢が上の場合、高齢、病気、死亡などによって、成年後見の業務を続けられなくなり、交代が必要なることがあります。しかし、個人の成年後見人が交代する場合、ご本人の生活状況、支援者との関係、これまでの判断の経緯などを後任者へ確実に引き継ぐ仕組みが、制度として十分に整っているとはいえません。これを「成年後見人の継続性の問題」と呼びます。

この記事では、個人の成年後見人に生じる継続性の問題と、その対応策としての法人後見について解説します。

個人後見で起きる「成年後見人の継続性の問題」とは

知的障害者の成年後見は長期にわたる可能性があります

成年後見制度は、認知症高齢者、知的障害、精神障害などにより、判断能力に問題がある人を保護・支援する制度です。家庭裁判所から選任された成年後見人が、ご本人の財産管理や身上保護を担います。

認知症と診断されてからの生命予後は3年から7年といわれています1。そのため、成年後見人が選任されてからご本人が亡くなるまでの期間は、長くても10年程度です。

それに対して、ダウン症や自閉症などで先天性の知的障害がある場合、18歳で成人した時点で成年後見人を選任することができます。その場合、成年後見人による支援期間は、30年以上になるということがあります。

成年後見人が交代せざるを得ない理由

成年後見制度の改正により、必要な場面に限ってスポット的に成年後見人を利用できるようになる見通しです。しかし、重度知的障害のあるお子さんの親亡き後の支援を考えると、スポット利用だけでは十分ではありません。財産管理から身上保護まで、多岐にわたる支援が継続的に必要です。ご本人が亡くなった後の火葬や納骨といった死後事務まで、担ってもらう必要がある方もいます。

しかし、成年後見人が個人である以上、高齢、病気、死亡などの理由で、途中で辞任せざるを得ない場合があります。成年後見人に20代や30代前半でなる人は少なく、40代や50代が多いと考えられます。例えば、現在50歳の方が成年後見人に選任された場合、ご本人が亡くなる前に辞任することになる可能性は十分にあります。

本人が30歳、個人の成年後見人が50歳で成年後見を開始し、20年後に本人50歳、後見人70歳となり、後任の成年後見人へ交代する流れを示したイメージ図

成年後見人が辞任した場合、家庭裁判所は新しい成年後見人を選任します。つまり、知的障害のあるお子さんが若いうちに成年後見人が選任されると、途中で成年後見人が交代することがあります。

成年後見人の交代で生じる問題

後任者への引き継ぎは、後見事務の記録を共有する程度にとどまるのが実情です。前任者が長年かけて築いてきたご本人との信頼関係や支援のノウハウは、記録だけで引き継げるものではありません。

記録だけを頼りに支援を始める後任者は、ご本人のことを一から理解し直す必要があります。後任者が前任者と同じようにご本人の生活を守ってくれる人かどうかも、分かりません。

しかも、この交代は、親亡き後に起きる可能性が高いのです。親が生きていれば、後任の成年後見人がきちんと職務を果たしているかを見守り、必要があればご本人のために働きかけることもできます。親亡き後は、それができません。

つまり、個人の成年後見人に任せる場合、最初に誰を選ぶかだけでは足りません。その人が支援を続けられなくなったときに、ご本人の生活状況、支援者との関係、これまでの判断の経緯をどのように引き継ぐのかが問題になります。しかし、個人後見では、その引き継ぎを制度として安定的に行うことに限界があります。

法人後見は成年後見人の継続性の問題に対応できます

この継続性の問題に対応する方法として、法人後見があります。成年後見人になれるのは、個人だけではありません。社会福祉法人やNPO法人などの法人が、成年後見人になることもできます。これを「法人後見」と呼びます。

法人後見が個人後見と大きく異なるのは、法人そのものには、個人のような加齢、病気、死亡ということが起きないことです。もちろん、法人が閉業または解散すれば、成年後見人を続けることはできません。しかし、法人が存続している限り、担当職員が退職したり交代したりしても、成年後見人である法人自体は変わりません。ここが、個人後見との大きな違いです。

法人後見では、法人の職員が実際の後見事務を担当します。担当職員が変わる場合でも、法人内で引き継ぎが行われるため、支援の継続性を保ちやすくなります。法人としてご本人を支える体制を作れるからこそ、個人後見にはない安心感があります。

個人後見と法人後見の違い
項目 個人後見 法人後見
成年後見人 個人 法人(団体・組織)
加齢・病気・死亡の影響 成年後見人の交代につながります。 法人自体には、加齢・病気・死亡という問題はありません。
担当者の交代 後任の成年後見人へ引き継ぐ必要があります。 法人内で担当職員を引き継ぐことができます。
支援の継続性 個人の事情に左右されやすいです。 組織として支援を継続しやすいです。
多職種連携 個人の人脈や資格に左右されやすいです。 法人内に複数の専門性を持たせやすいです。

このように、法人後見には、個人後見にはない継続性の強みがあります。しかし、法人後見の意義はそれだけではありません。法人後見では、法律、福祉、医療、心理などの専門職がチームとして関わる「多職種連携」により、ご本人を多面的に支える実践もあります。個人後見人が一人で担う支援とは異なり、法人そのものに複数の専門性を持たせられる点は、法人後見ならではの強みです。

次の記事では、法人後見の現状と、多職種連携による支援の可能性について解説します。

  1. 認知症の生命予後と終末期,どう判断する?(関口健二) ↩︎

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