障害者虐待

放課後等デイサービスの元運営者に有罪判決-暴行事件の背景と法的解説

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前園 進也
前園 進也
前園 進也
弁護士
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重度知的障害児の父親
埼玉弁護士会・サニープレイス法律事務所所属

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大阪のデイサービス元運営者、障害者少年への暴行で有罪判決を受ける

大阪府吹田市の放課後等デイサービス施設「アルプスの森」の元運営者の被告人(61歳)が、2023年2月から4月の間に、障害のある利用者の少年(当時15歳)に対して繰り返し頭を殴ったり足を蹴ったりする暴行の罪で、2024年9月9日、大阪地方裁判所から懲役1年2カ月、執行猶予3年の有罪判決を受けました1

被告人はこれまでの裁判で起訴内容を認めていました。犯行の動機は検察官によると被害少年に「引っかかれたり、物を投げつけられたりしたことに立腹し、暴行を加えた」とのこと2

判決を下した裁判官は、事件を「常習的犯行で悪質」と述べつつ、前歴がなく反省の意を示している名を踏まえて執行猶予を与えました3

また、この施設では過去にも、送迎中に男子中学生が事故死する事件があり、被告人の兄が業務上過失致死罪で裁判を受けています。

常習性考慮か 施設元運営者の暴行、検察はなぜ起訴したのか

この判決は、利用者の少年に対する暴行についてのものです。暴行罪の主な刑罰は2年以下の懲役、または30万円以下の罰金です。この被告人には前科前歴がありません。つまり、これまでに犯罪を犯して有罪判決を受けたことや、犯罪の疑いをかけられたことがないということです。そのようなケースでは、暴行罪での起訴や裁判になることは多くありません。簡易裁判で罰金刑が科されることも少なくありません。ただし、今回は常習的な犯行であることや社会的な影響を考慮し、検察官が起訴に踏み切ったのかもしれません。

暴行罪は、被害者にケガがなかった場合に適用されます。もし被害者がケガをしていた場合は、傷害罪となり、より重い罪に問われます。

もっとも、暴行罪で起訴されているからといって、被害少年がケガをしていなかったことを意味するわけではありません。実際にはケガをしていても、病院で医師の診断を受けていないと、ケガの存在を証明するのが難しくなります。そのため、ケガをしていた場合でも、軽い暴行罪として起訴され、処罰されることも少なくありません。

執行猶予3年、その意味は? 再犯なら今回の刑期と合わせて服役

前科がない場合、罰金刑になることが少なくないと先ほど説明しました。そのため、この暴行事件で執行猶予付きの有罪判決が下るのは、弁護士としては想定内です。

執行猶予とは、刑務所での服役期間を1年2か月間猶予することを意味します。猶予期間は通常3年から5年の範囲で設定され、今回は最短の3年が選ばれました。この3年間に再び犯罪を犯さなければ、刑務所に服役する必要はなくなります。

しかし、この期間中に再び犯罪を犯し有罪判決を受けると、執行猶予が取り消される可能性があります。取り消されると、刑務所に行くことになります。その場合、今回の1年2か月と、再犯に対する懲役期間を合計した期間刑務所で過ごすことになります。このような説明は、執行猶予付きの判決が言い渡された際に、裁判官から行われます。

  1. 1 関西テレビ放送「【速報】放課後等デイ施設で利用者に繰り返し暴力振るった罪 施設元代表に懲役1年2カ月執行猶予3年↩︎
  2. 2 朝日新聞デジタル「通所する男子高校生への暴行罪 施設代表の男らが起訴内容の認否留保↩︎
  3. 3 日テレNEWS「放課後デイサービス利用の中高生に繰り返し暴行「犯行は常習的」施設代表の男に執行猶予付き有罪判決↩︎
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