南相馬市の障害者支援施設、虐待事件で行政処分 – 3か月間の新規受け入れ停止
ニュースの要約
南相馬市の障害者支援施設「原町共生授産園」において、男性職員が入所者の男性に暴行を加えてけがをさせた事件が発生しました1。この事件に関連して、施設は市町村への報告を怠っていました。県はこの施設に対し、「障害者総合支援法」に基づき、新規利用者の受け入れを2024年9月17日から12月16日までの3か月間停止する行政処分を行いました2。
この行政処分の詳細は、こちらから。
行政処分の解説
行政処分の理由
福島県は、行政処分の理由として、次の二つを挙げています。
- 人格尊重義務違反
- 関係法令違反
人格尊重義務違反とは?
障害福祉サービスなどについて規定する法律である「障害者総合支援法」は、都道府県等から指定を受けた障害福祉サービス事業者に対して、障害者等の人格を尊重することを求めています3。これを人格尊重義務といいます。
障害者に対する虐待は、障害者の人格を尊重していないことになりますので、この人格尊重義務に違反することになります。
福島県は人格尊重義務違反を基礎付ける事実として「令和6年3月17日午前2時半頃に、施設の従業員が故意に足で入所者を蹴る暴力により、入所者が入院に至る身体的虐待が発生した」ことを挙げています。
関係法令違反とは?
障害者総合支援法は、障害福祉サービス事業者に対して、福祉に関するその他の法律に違反したときにも行政処分ができると規定しています4。福祉に関するその他の法律には「障害者虐待防止法」が含まれます5。
障害者虐待防止法は、障害福祉サービス事業に従事している人による虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合、市町村に通報しなければならないと規定しています6。
原町共生授産園は、2024年3月17日の障害者虐待について関係機関等から情報提供を受けていても、通報しなかったようです。
処分の内容
障害者総合支援法は、法令違反等を行なった指定障害福祉サービス事業者に対する制裁として、次の3つの処分を規定しています7。
- 指定の取り消し
- 指定の効力の全部停止
- 指定の効力の一部停止
指定の取り消しは、障害福祉サービスの提供を行なっても、その報酬をもらえなくなります。私費で報酬を支払ってくれる障害者はいてもごく少数でしょうから、障害福祉サービス事業を廃業することになります。
指定の効力の全部停止は、定められた期間、障害福祉サービスの提供を行なっても、その報酬をもらえなくなります。指定の取り消しとは違って期間限定です。その期間を乗り切ることができれば、障害福祉サービス事業を必ずしも廃業しなければならないわけではありません。
指定の効力の一部停止は、定められた期間、指定の効力の一部が停止されます。代表的なものが新規受け入れの停止です。新規に契約した利用者に対しては、定められた期間内に障害福祉サービスの提供をしても、報酬をもらえません。他方、既存の利用者に対する障害福祉サービスの提供については報酬をもらうことができます。事業者の法令違反などを理由に既存の利用者への不利益を避けつつも、事業者への制裁を課すものとなります。
今回の行政処分は、指定の効力の一部停止、つまり、3か月間の新規受け入れの停止となります。指定の効力が一部停止される障害福祉サービス事業は、施設入所支援、生活介護、短期入所の3つのサービスです。
- 1 毎日新聞「「自分より弱い」障害者施設で職員が暴行 福島地裁相馬支部で初公判」 ↩︎
- 2 日テレNEWS NNN「虐待で障がい者施設処分 新規受け入れ3か月停止 福島・南相馬市」 ↩︎
- 3 障害者総合支援法43条3項 ↩︎
- 4 障害者総合支援法50条1項10号 ↩︎
- 5 障害者総合支援法施行令26条1項5号、同22条1項13号 ↩︎
- 6 障害者虐待防止法16条1項 ↩︎
- 7 障害者総合支援法50条1項 ↩︎