特別児童扶養手当の所得制限:年収と控除額で決まる【基準額・計算例・注意点を解説】
特別児童扶養手当とは?所得制限の概要
20歳未満の障害のあるお子さんを育てているご家庭の経済的な負担を軽減するために、国から支給される『特別児童扶養手当』。
しかし、この手当はすべてのご家庭に支給されるわけではなく、受給者の所得が一定額を超えると、支給が1年間停止されてしまう『所得制限』があります1。
思わぬ不支給を避けるためにも、ご自身の所得が制限の対象となるか事前に確認しておくことが重要です。
このページでは、特別児童扶養手当の所得制限について、特に年収を基準に知りたい方に向けて、基準額や計算方法などを分かりやすく解説していきます。
なぜ所得制限があるの?その理由を解説
「そもそも、なぜ所得制限があるのでしょうか?」
そう疑問に思われる方もいるかもしれません。
特別児童扶養手当の原資・出所は、税金です。そのため、税金の使い道は適正で公正であることが求められます。高所得者は税金を使ってまで経済的に支援する必要が少ないと判断されて、特別児童扶養手当が支給されないのです。
これに対して、国民年金には原則として所得制限はありません。高所得者であっても国民年金をもらえます。これは国民全員が強制的に加入し、保険料を支払うことで義務付けられているからです。
特別児童扶養手当に所得制限がもうけられている理由には、それなりに合理的な根拠があることが理解できたでしょうか?
所得制限の基準額はいくら?
では、具体的にどれくらいの所得があると特別児童扶養手当がもらえなくなるのでしょうか?
所得制限の基準額は法律で決められており、2種類あります2。
- 受給者の所得を基準とするもの
- 受給者の配偶者または受給者と同一生計の扶養義務者の所得を基準とするもの
どちらの基準額を超えても、特別児童扶養手当は受給できません。
同一生計とは、簡単に言うと家計や財布が同じということです。同居しているかどうかは関係ありません。例えば、単身赴任の場合や、常に仕送りをしている場合も同一生計とみなされます3。
扶養義務者とは、受給者の子、親、兄弟姉妹などです4。血のつながりだけではなく、養子縁組でできた家族も含まれますので、注意が必要です。
所得制限基準額:扶養親族の数で異なる金額を一覧表で確認
では、実際に所属制限の基準額を見てみましょう。それが次の表です。なお、扶養親族が標準的なケースです。例えば、扶養親族が老親などの場合には基準額は異なります。
扶養親族の数 | 受給者の所得 | 受給者の配偶者または扶養義務者の所得 |
---|---|---|
0人 | 4,596,000円 | 6,287,000円 |
1人 | 4,976,000円 | 6,536,000円 |
2人 | 5,356,000円 | 6,749,000円 |
3人 | 5,736,000円 | 6,962,000円 |
4人 | 6,116,000円 | 7,175,000円 |
5人 | 6,496,000円 | 7,388,000円 |
この表を見ればわかるように、所得制限の基準額は、扶養している親族の数によって変わります。扶養親族が多いほど、基準額は高くなります。
扶養親族とは?:103万円以下の収入で生計を共にする家族(配偶者以外)
扶養親族の典型例は、配偶者以外の親族で、受給者と生計を同一にする年間収入が103万円以下の人のことです5。
専業主婦(夫)は、配偶者であるため扶養親族には含まれませんので注意してください。
例えば、私には、専業主婦の妻と障害のある子供が1人と同居している年収が103万円を超える養親がいます。このうち扶養親族にあたるのは、障害のある子供も1人だけですので、扶養親族の数は1人ということになります。
所得制限は受給者本人の所得で決まる:配偶者や扶養義務者の基準額は?
基本的には、受給者の所得を基準とする基準額が重要です。なぜなら、特別児童扶養手当は、夫婦のうち所得が多い方が受給者となり、受給者の配偶者の所得を基準とする基準額は、受給者の基準額よりも高いため、原則として問題にならないからです。
ただし、受給者が障害のある20歳未満の子、配偶者以外で、受給者の扶養義務者と同居している場合、同居はしていないけどその扶養義務者から扶養を受けている場合には、受給者の扶養義務者の所得も問題となるので注意です。その場合はその扶養義務者の所得も基準額を超えていないか確認しましょう。
それから、世帯全体の所得と勘違いされている人をたまに見かけますが、世帯全体の所得ではなく個人単位であることに注意しましょう。
年収でチェック:所得制限にひっかかる?ひっかからない?
所得制限の計算方法:年収ではなく「所得」で判定!
所得制限の基準となるのは、年間の各種所得額から所得控除額を差し引いた金額です。ここでは、受給者が会社員で給与所得のみの場合を説明します。個人事業主(副業を含む)や給与所得以外の所得がある場合は、ここでは説明を省略します。
具体的な計算は、次の2つのステップから導き出します。
- 「年間の収入」から「給与所得控除額」を差し引き、「給与所得」の金額を出します。
- 「給与所得」の金額から「所得控除」の額を差し引きます。
年間の収入は、源泉徴収票の「支払金額」に記載されています。給与所得の金額は、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」に記載されています。したがって、手元に源泉徴収票があれば特に計算する必要はありません。
ただし、所得控除の額は、源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」と同額ではないので注意が必要です。なぜなら、特別児童扶養手当における所得控除は、所得税や住民税における所得控除の金額とは異なり、または所得控除の一部しか認められていないからです6。例えば、生命保険料控除は所得税の場合は控除の対象になるのに対して、特別児童扶養手当においては、控除の対象となりません。
所得控除:所得税とは異なる〜必ず適用される控除と障害者控除
特別児童扶養手当における所得控除にはさまざまな種類があります7。それぞれの所得控除の説明は別の機会にしますので、ここでは声明を省略します。ここでは給与所得がある人が必ず控除される以下の2種類の所得控除と、障害者控除のみ説明します。
障害者控除とは、特別児童扶養手当の受給者自身が障害者の場合、または受給者の同一生計の配偶者並びに扶養親族が障害者の場合に受けられる所得控除の1つです。特別児童扶養手当を受給できるということは、扶養親族に障害者がいることを意味します。この障害のある扶養親族は、障害者手帳を取得しているでしょうから、この障害者控除が適用されます。
特別障害者控除の額は27万円です10。ただし、障害の程度が重度以上である場合には40万円が控除されます11。
年収別のシミュレーション
では、具体的な年収から所得制限の基準となる金額がいくらになるかを表にまとめました。なお、障害者控除は27万円としています。
年収 | 給与所得 | 所得控除の額 | 計算結果 |
---|---|---|---|
500万円 | 356万円 | 45万円 | 311万円 |
600万円 | 436万円 | 45万円 | 391万円 |
700万円 | 520万円 | 45万円 | 475万円 |
800万円 | 610万円 | 45万円 | 565万円 |
まとめ|特別児童扶養手当: 所得制限で疑問が残ったら、専門家へ
特別児童扶養手当の所得制限について、ご理解いただけましたでしょうか?
所得制限の基準となるのは、「所得控除後の金額」です。ご自身の「所得控除後の金額」と基準額を比較して、当てはまるかどうかを確認しましょう。
もし、基準額付近で該当するかどうか判断が難しい場合や、控除について詳しく知りたい場合は、専門家に相談することをおすすめします。