福祉現場でカスハラが増えている
障害福祉の現場で、利用者や家族から職員への嫌がらせ・暴力・理不尽な要求が増えています。いわゆる「カスハラ(カスタマーハラスメント)」です。厚生労働省の調査でも、職員の19.8%が家族等から、39.6%が利用者からハラスメントを受けた経験があると報告されており1、もはや「たまにある話」では済まない問題です。
カスハラとは何か
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、利用者や家族からのクレーム・言動のうち、(1)要求の内容が正当でない、または(2)要求のやり方が社会通念上不相当(世間一般の常識から見て許容できない)なもので、職員が働きにくい環境に追い込まれる「著しい迷惑行為」のことをいいます。
ポイントは、単なる苦情やクレームとは違うという点です。「何を求めているか(要求の正当性)」と「どんなやり方で求めているか(手段の相当性)」という2つの観点から判断されます。
障害福祉の現場に特有の背景
一般的なカスハラと違い、障害福祉の現場には特有の事情があります。
利用者の家族は、障害のある家族を毎日支えながら、強いストレスや孤立感を抱えています。その不安や焦りが「攻撃的な言動」として職員に向かうことが少なくありません。
さらに、知的障害や自閉症のある利用者は、自分の気持ちや不満・被害を言葉で伝えることが難しい場合があります。家族がその「代わりに声を上げる人(代弁者)」として動かざるを得ない構造があり、それが過剰な要求や攻撃的な言動につながることもあります。行為の背景に「悪意」だけでなく「切実な不安」や「代わりに言わなければという焦り」がある場合も多く、一般的なカスハラと単純に同列には語れない面があります。
しかし、動機がどうであれ、職員が受ける精神的・身体的ダメージは現実のものです。背景への理解と、組織としての毅然とした対応を両立させることが求められます。
具体的な行為の種類
ハラスメントは以下のように3種類に分けられます2。
身体的暴力は、「身体的な力を使って危害を及ぼす行為」です。職員がよけたため、実際には危害を受けなかったケースも含まれます。
精神的暴力は、「個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為」です。怒鳴る、人格を否定する発言をする、脅す、サービスの範囲を超えた要求を繰り返す、といった行為が該当します。
セクシュアルハラスメントは、「意に添わない性的誘いかけ、好意的態度の要求等、性的いやがらせ行為」です。
放置するとどうなるか
ハラスメントを受けた職員の44.8%が「仕事を辞めたいと思った」と回答しています3。ただでさえ人手不足の障害福祉業界で、職員が辞めていくことは事業の存続に直結します。
また、事業者には職員を危険から守る「安全配慮義務」(職員が安全に働けるよう使用者が配慮する法的な義務)があります。この義務を果たしていないと判断された場合、損害賠償を求める裁判を起こされるリスクもあります。
まとめ
カスハラは「職員個人が我慢すればいい問題」ではなく、事業者として組織全体で取り組むべき経営上の課題です。まず「何がカスハラにあたるのか」を正確に知ることが、対策の第一歩になります。
具体的な対応方法や法的措置については、関連記事で詳しく解説しています。
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脚注
- 障害福祉サービス等事業者向け職員を利用者・家族等によるハラスメントから守るためにp5 ↩︎
- 同上p4 ↩︎
- 同上p5 ↩︎