信託の受託者になれるのは誰?商事信託と民事信託の違い

信託の受託者は誰でもなれるわけではない

障害のある子どもに、親亡き後も安心して暮らせる未来を残したい。そう考えたとき、親の財産を残す主な方法として、遺言・信託・贈与・生命保険の4つが挙げられます。このうち信託は、毎月一定額を渡す仕組みにしたり、不動産を管理して家賃を渡したりと、ほかの方法にはない自由度の高さが魅力です。

ただ、信託を実際に使おうとすると、最初に必ずぶつかる問題があります。「受託者を誰にするか」です。

受託者とは、大切な財産を預かって管理する人のことです。子どもの生活を支えるお金を託す相手ですから、誰でもいいわけにはいきません。実は、なれる人となれない人がはっきり決まっています。

信託の基本構造を示した図解。上部に委託者(中年男性)、左下に受託者(スーツ姿の男性)、右下に受益者(子ども)が三角形に配置されており、委託者から受託者へ「財産を託す」、受託者から受益者へ「利益を渡す」矢印が描かれている。

この記事では、受託者になれる人の代表的な選択肢を整理しながら、障害のある子どもを持つ親として知っておいてほしい注意点もあわせてお伝えします。

受託者の選択肢①:信託銀行・信託会社(商事信託)

受託者の代表的な選択肢のひとつが、信託銀行や信託会社に任せる方法です。これを商事信託(しょうじしんたく)といいます。「商事」とはビジネスという意味で、要するに「仕事として信託を引き受ける」ということです。

ビジネスとして信託を行うには、国の許可が必要です1

信託は他人の大切な財産を預かって管理・運用するものです。そのため国は許可を出す前に、①きちんとしたルールで運営できるか、②十分なお金があるか(資本金1億円以上)、③知識・経験があり社会的に信頼できるか、この3つを審査します2

受託者の選択肢②:民事信託

では、受託者になれるのは許可を持つ信託銀行や信託会社だけなのでしょうか。実はそうではありません。もうひとつの選択肢があります。それが民事信託(みんじしんたく)です。

民事信託とは、ビジネスとして行わない信託のことです3。商事信託のように仕事として引き受けるわけではないため、国の許可は必要ありません。

では、「弁護士でも社会福祉法人でもNPO法人でもできるのか?」というと、できません。弁護士は明らかにビジネスですし、社会福祉法人やNPO法人もビジネスとしての側面がないとは言えません。いずれも国の許可が必要になります。その許可を持っていないため、受託者にはなれません。

受託者になれる人となれない人を示した図解。左側の緑枠に「信託会社・信託銀行」と「家族・親族」が受託者になれる例として示され、右側のグレー枠に「弁護士」と「非営利法人」が並んでいる。

では、結局誰が受託者になるのでしょうか。民事信託では、家族が受託者になるケースが多くなっています4。理由は現実的なところにあります。信託銀行や信託会社はビジネスである以上、採算の取れない案件は引き受けてもらえません。大切な財産の管理を家族以外の他人に頼むのは、他人である以上なかなか難しいのが実情です。こうした条件を満たす受託者となると、自然と家族に行き着くのです。

商事信託は何でも引き受けてもらえるわけではない

ここまでをまとめると、受託者の代表例は、国の許可を持つ信託銀行・信託会社と、家族の2つです。

商事信託と民事信託の違いを比較した図解。左側の商事信託は受託者が信託会社・信託銀行、性質はビジネス、国の免許は必要。右側の民事信託は受託者が家族・親族、性質は家族内の仕組み、国の免許は不要。下部に「どちらも信託ですが、だれが受託者になるかが大きく違います」と記載。

ただし、信託銀行や信託会社なら何でも引き受けてもらえるかというと、そうではありません。先ほど述べたように、ビジネスである以上、採算の取れない案件は断られます。たとえば、障害のある子どもが住むための自宅不動産の管理を頼みたい場合、引き受けてもらえないことが多いのが実情です。信託銀行や信託会社が不動産の信託を引き受けるのは、家賃収入が得られるアパートやマンションといった物件が中心です。

私自身も、ここで壁にぶつかります。私が望んでいるのは、自宅をわが子に残して、その家で一人暮らしをさせることです。しかし、わが子は重度の知的障害があります。固定資産税の支払いや建物の修繕といった管理を、自分でこなすことはできません。誰かが代わりに管理してくれる仕組みが必要です。そして、わが家の子どもは一人っ子。きょうだいに頼れるご家庭であれば、家族を受託者にする道が開けます。一人っ子の場合はもちろん、きょうだいはいるけれど頼りたくない、あるいはきょうだいには自分の人生を自由に歩んでほしいという親御さんにとっては、この選択肢がありません。

では誰に頼めばいいのか。現時点では、法律上、受託者になれる人はここまで述べた通りです。頼れる家族がいない場合、残念ながら不動産の信託は難しいのが実情です。この実情を変える方法のひとつとして、弁護士や非営利団体がビジネスとして受託者になれるよう法律が改正されることが考えられます。

ただし、完全に道が閉ざされているわけではありません。頼れる家族がいなくても、自宅などの不動産を信託として引き受けてくれる可能性のある会社が存在します。この情報は登録ユーザー限定でご案内しています。その理由は、不動産をお持ちでない方にはあまり関係のない情報であるためです。また、私自身がそのサービスの詳細を十分に把握しきれていないため、広く公開する形での紹介は控えたいと考えているからです。

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  1. 信託業法第3条 ↩︎
  2. 信託業法第5条信託業法施行令第3条 ↩︎
  3. 東京弁護士会「(5)商事信託と民事信託↩︎
  4. 伊庭潔/編著『信託法からみた民事信託の手引き』(日本加除出版、2021年)354頁 ↩︎

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