障害者虐待

障害者虐待を考える:集団支援の課題と再発防止策

虐待の多いサービスとその理由
前園 進也
前園 進也
前園 進也
弁護士
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重度知的障害児の父親
埼玉弁護士会・サニープレイス法律事務所所属

障害者の親亡き後や障害福祉について、障害者の親&弁護士の視点から役立つ情報を発信しています。法律相談もできますので、お気軽にお問い合わせください。
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障害者虐待の実態:虐待の多いサービスの共通点

厚生労働省の『令和4年度 「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果報告書』によると、障害者虐待が認められた施設・事業所で特に件数が多い上位5サービスは以下のとおりです。

  1. 共同生活援助 252件 26.4%
  2. 障害者支援施設 214件 22.4%
  3. 生活介護 131件 13.7%
  4. 就労継続支援B型 113件 11.8%
  5. 放課後等デイサービス 93件 9.7%

これらの5サービスに共通するのは、複数人の障害者を、それよりも少ない人数の支援員でサポートする集団支援という形態です。なぜ集団支援で虐待が発生しやすいのでしょうか?

集団支援で虐待が発生しやすい要因

これまでの研究成果から、以下のような要因が考えられます。

  • 利用者あたりの支援員の人数が決まっているにもかかわらず、人手不足のため、障害者支援の知識や経験がない人を採用し、支援に当たらせるため、適切な支援がなされない。
  • 人手不足とも相まって集団支援の場合、支援員の業務過多になりがちで、いかに現場を効率的に回すかという支援者側の都合が優先される。円滑に業務を遂行するためであれば、手段の選ばなくなる。
  • 集団支援は事業者の施設で行われるため、外部の目が届きにくい閉鎖的な環境である。

再発防止に向けて:構造的な課題への取り組み

障害者虐待は深刻な問題です。特に集団支援を行うサービスにおいては、上記のような構造的な要因が虐待発生のリスクを高めていることを理解する必要があります。

もちろん、全ての施設で問題が起きているわけではありません。しかし、このような構造的な問題があるということは、私たちも知っておく必要があります。

この点について、虐待があった事業所でも虐待をしなかった職員がいるのだから、加害者が悪いのではないかと考える読者もいると思います。

確かに、そのとおりです。しかし、虐待をした職員をクビにしても、構造的な問題が残っている限り、再発を防止できません。再発防止において優先的に取り組むべきなのは構造的な問題の解決ではないでしょうか?

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