【障害児の親必見】障害児福祉手当とは?受給条件・金額・申請方法を弁護士が解説
障害児福祉手当という、20歳未満の障害児・者がもらえる手当のことはご存じですか? もらえる障害児・者の数は決して多くありませんが、知っておいて損はないと思います。
重度の障害児の親である弁護士が、どこよりも詳しく解説します。
障害者やその家族向けの手当
障害児・障害者やその家族が受けられる経済的支援として、代表的なものが以下の5つです。
- 障害年金
- 障害児福祉手当
- 特別障害者手当
- 特別児童扶養手当
- 在宅重度障害者手当
これら5つの経済的支援のうち、1.から4.は、法律で定められているものです。そのため、全国どこに住んでいても、同じ内容の経済的な支援を受けることができます。
他方、5.の在宅重度障害者手当は、地方自治体独自の制度です。それなりの地方自治体にこの制度はありますが、名称、支給の条件や支給額などの手当の内容が違います。
この記事では、この3.の障害児福祉手当について、解説します。
障害児福祉手当とは?
障害児福祉手当を支給する目的
障害児福祉手当とは、「重度の障害のため必要となる精神的、物質的な特別の負担の軽減の一助として手当を支給することにより」(厚生労働省)、特別障害者の福祉の増進を図ることを目的とした手当です(特別児童扶養手当等の支給に関する法律1条)。
重度障害児とは?
障害児福祉手当は、20歳未満の重度障害児に対して支給されます。この「重度障害児」とは、「政令に定める程度の」重度の障害の状態にあるため、日常生活において常時の介護を必要とする人のことです(特別児童扶養手当等の支給に関する法律2条2項)。どの程度の障害であれば、重度障害児に当たるかについては、後ほど「障害の程度」で詳しく見ていきます。
支給金額
特別障害者手当の金額は、法律では1万4170円となっています(特別児童扶養手当等の支給に関する法律18条)。ただし、毎年4月には支給金額は改定されていて、2022年4月以降は、1万4850円です(特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令9条の2)。
支給時期
特別障害者手当は、毎年、次の月に3か月分まとめて支給されます(特別児童扶養手当等の支給に関する法律19条の2)。
- 2月
- 5月
- 8月
- 11月
障害の程度
政令で定める程度の重度の障害とは?
障害児福祉手当は、「政令に定める程度の重度の障害」がある20歳未満が受給することができます。これだけでは、よくわからないので、障害の程度がどれぐらいであれば、障害児福祉手当を受給できるかについて、詳しく解説します。ただし、この記事では、すべての障害については触れることができないので、精神の障害における知的障害と発達障害に限定します。
「政令に定める程度」とありますが、政令はどのように定めているでしょうか。政令は、次のように定めていいます(特別児童扶養手当等の支給に関する法律施行令1条1項、別表第一)。
- 両眼の視力がそれぞれ〇・〇二以下のもの
- 両耳の聴力が補聴器を用いても音声を識別することができない程度のもの
- 両上肢の機能に著しい障害を有するもの
- 両上肢の全ての指を欠くもの
- 両下肢の用を全く廃したもの
- 両大腿たいを二分の一以上失つたもの
- 体幹の機能に座つていることができない程度の障害を有するもの
- 前各号に掲げるもののほか、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であつて、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
- 精神の障害であつて、前各号と同程度以上と認められる程度のもの
- 身体の機能の障害若しくは病状又は精神の障害が重複する場合であつて、その状態が前各号と同程度以上と認められる程度のもの
認定基準
知的障害や発達障害は、精神の障害に当たるので、9.になります。ただ、これではまったくわかりません。これについては、厚生労働省が、障害児福祉手当の認定基準である「障害児福祉手当及び特別障害者手当の障害程度認定基準について」という文書を公表して、明らかにしています。障害児福祉手当の個別基準については、この文書の9〜10ページに詳しく書かれています。
知的障害の場合
知的障害の場合、知能指数が20以下であり、次の年齢階層別の障害の程度が最重度に当たる場合、重度障害児に当たります。
段階/年齢 | 重度 | 最重度 |
---|---|---|
5歳以下 | 1 言葉がごく少なく意思の表示は身振りなどで示す 2 ある程度の感情表現はできる(笑ったり、怒ったり等) 3 運動機能の発達の遅れが著しい 4 身の回りの始末はほとんどできない 5 集団遊びはできない | 1 言語不能 2 最小限の感情表示(快、不快等) 3 歩行が不可能またはそれに近い 4 食事、衣服の着脱などはまったくできない |
6歳〜17歳 | 1 言語による意思表示はある程度可能 2 読み書きの学習は困難である 3 数の理解に乏しい 4 身近なものの認知や区別はできる 5 身辺処理は部分的に可能 6 身近な人と遊ぶことはできるが長続きしない | 1 言語は数語のみ 2 数はほとんど理解できない 3 食事、衣服の着脱などひとりではほとんどできない |
18歳以上 | 1 日常会話はある程度できる 2 ひらがなはどうにか読み書きできる 3 数量処理は困難 | 1 会話は困難 2 文字の読み書きはできない 3 数の理解はほとんどできない 4 身辺処理はほとんど不可能 5 作業能力はほとんどない |
最重度の知的障害であれば、重度障害児に当たるのは、わかりました。しかし、SNSなどでは、最重度ではないと思われる障害児であっても、この障害児福祉手当をもらっている人が散見されます。では、最重度ではなく、重度であっても重度障害児に当てはまるでしょうか。
この点について、厚生労働省の上記認定基準にははっきりとは書かれていません。ただし、精神の障害においては、精神障害の程度だけではなく、日常生活能力の程度というのも考慮されます。
日常生活能力
障害児福祉手当の認定診断書には、「障害の状態」について、「日常生活能力の程度」の記載が必須となっています。具体的な記載内容は次の7項目です。
- 食事(全介助、半介助、自立)
- 洗面(全介助、半介助、自立)
- 排泄(おむつ必要・不要、全介助、半介助、自立)
- 衣服(脱げない、着れない、ボタン不能、自立)
- 入浴(全介助、半介助、自立)
- 危険物(全くわからない、特定の物・場所はわかる、大体わかる)
- 睡眠(夜眠らず騒ぐ、時々不眠、寝ぼける、問題なし)
知能指数や、知的機能の程度において、最重度ではなく重度に該当しても、この日常生活能力の程度を加味した総合判断では、重度障害児に該当し、障害児福祉手当を受給できるかもしれません。この点は、要件該当の判断が緩い地域もあれば、厳しい地域があり、特別児童扶養手当と同様の地域格差の問題があるかもしれません。
発達障害の場合
発達障害の場合は、知的障害のような詳しい基準はなく、「社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動が見られるもの」という程度の記載しかありません。
発達障害とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとされています。
発達障害においても、知的障害と同様に、日常生活能力の程度が認定に影響を与えます。
支給制限
障害児福祉手当は、20歳未満の重度障害児であれば、本人に支給されます。ただし、支給が制限されることがあります。主な支給制限は、次の二つです。
- 入所・入院による支給制限
- 所得制限
支給制限は、制限する事情がなくなれば、支給されます。
入所・入院による制限
障害児福祉手当は、次の場合に支給されません。
- 障害児入所施設、乳児院、児童養護施設などに入所した場合
- 療養介護を行う病院に入院した場合
所得制限
障害児福祉手当にも所得制限があります。受給者本人、その配偶者、受給者本人の生計を維持する扶養義務親族の前年の所得によっては、1年間支給が停止します。
所得制限の金額の目安は、厚生労働省のサイトをご覧ください。
障害児福祉手当の支給者である重度障害児が、所得制限を受けることはあまりないと思います。しかし、受給者本人の生計を維持する扶養義務親族(例えば、同居して生計が一緒の父母など)が高額所得者であると、所得制限に引っかかる場合がありますので、ご注意ください。
申請手続
これまでの解説を読んで、障害児福祉手当が受給できそうな人に向けて、申請の手続きについても簡単に紹介します(「障害児福祉手当及び特別障害者手当の支給に関する省令」参照)。
障害児福祉手当の認定は、地方自治体で行います。役所の窓口で、以下の書類を受け取ってください。なお、地方自治体によってはインターネットでダウンロードできるところもあるかもしれません。
- 障害児福祉手当認定請求書
- 障害児福祉手当認定診断書
- 障害児福祉手当所得状況届
2.の認定診断書は、障害や症状に関する専門医に作成してもらいます。それ以外は申請者(18歳未満でれば親権者である親や保護者)の方で記入します。
1.から3.の書類の準備が整ったら、以下の書類と一緒に、役所の窓口に提出します。
- 重度障害児の戸籍謄本・抄本
- 世帯全員の住民票の写し
- 重度障害児、その配偶者、申請者を扶養する義務があり、かつ、申請者の生計を維持している親族の所得に関する書類(なお、各人のマイナンバーがわかれば、書類の提出は省略されると思います)
提出書類に不備がなければ、しばらくしたら、認定の結果が文書で知らされます。
認定却下の通知が届いた場合、その結果に納得できない場合には、不服申し立てをすることができます。
障害児福祉手当のことでお困りの方へ
以上が、障害児福祉手当についての解説でした。
障害のあるお子さんの将来設計に役立つ経済的支援制度については、以下の記事も参考にしてください。
障害のある我が子の将来設計:経済的支援制度を知って賢く活用しよう
次のようなことでお困りの方は、ご相談に乗ります。お悩み・困り事の解消をお手伝いさせていただきます。
- 障害児福祉手当がもらえるか心配
- 今までもらえていた障害児福祉手当がもらえなくなった
- 役所の判断が納得いかないので、不服申し立てをしたい etc.